設計思想 == トレードオフに対する価値観の表明

ITシステムの設計をする際に、そのシステムを取り巻く制約条件・トレードオフ構造を把握することはとても重要です。そのような事柄について何をどのように考えるべきか、備忘メモを残しておこうと思います。

設計時に考えるべき事

1. 何と何がトレードオフとなるのか

設計をする際には、「〇〇を取ると△△を捨てることになる。逆に、△△を手に入れたい場合〇〇はあきらめざるを得ない」という、二者択一的な要素が存在します。まずは、このようなトレードオフ構造を可視化しましょう。

2. どちらを優先しどちらを捨てるのか

可視化されたトレードオフ構造については「何を重要視し、何を諦めるのか?」明確な方針を持つこと重要です。このようなトレードオフ構造に対する方針のことを 設計思想 と呼びます。設計に際しては明確な設計思想を持ち、設計ドキュメント内で明示的に説明しましょう。

引用文献

こうした、多数の自由度を持つ設計において、その方向付けをするガイドラインとなる方針、あるいは コンフリクトが発生したときに、優先順位を強く明確に決めたポリシー が、設計思想です。

いいかえるなら、設計思想とは価値観の表明に他なりません。とくに、トレードオフが生じる前に、「何を捨てるか」を決める ものなのです。
(略)
何年か前にKさんにお会いしたとき、わたしがまだHP-200LXという旧型のPDAを使い続けていることを覚えておられるでしょうか? あの製品は、明確な設計思想で作られた代表的製品だったと思います。携帯可能で、キーボードをそなえ、市販の単三乾電池で1ヶ月動く。そのかわり液晶はモノクロでバックライト無し、無線通信機能も無し。GUIも無し。それでも、わたしはあれを2台購入し、両方が壊れるまで10年以上も使い続けました。ですが、GUIをのせた後継機種は買いませんでした。設計思想に不透明さを感じたからです。

設計思想(Design Philosophy)とは何か : タイム・コンサルタントの日誌から

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コンセプトについて語るときに、常に著者が思い出す例は、1970年代後期に、時の米海軍作戦部長 ズーモルト(Elmo Zumwalt, Jr)大将が指揮して計51隻建造した、船団護衛及び低脅威海域哨戒を主任務とするローコンセプトのFFG-7級ミサイルフリゲート艦の下記を主要とする設計コンセプトである。
. (略)
本艦の設計コンセプトは、以下のとおりである。すなわち、対艦ミサイル装備のソ連攻撃型原潜脅威を曳航式パッシブソナーで 遠距離探知し、ヘリコプターで位置局限・攻撃することを重視する。
. (略)
しかしながら基本的にローコンセプト艦であることから、 最大戦力/航続距離、推進軸数等についてはトレードオフアイテムとする。 要するに、所要の任務に対応して、 必要な要件には重点投資するが、低減可能な項目については思い切って削減する という考え方である。
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軍事システムエンジニアリング』かや書房, 2006, P24-25

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