re:Invent 2020で技術革新の影響を可視化するための手法として Wardley Maps という手法がAdrin Cockroftによって紹介された。[1] ( AWS re:Invent 2020: Adrian Cockcroft’s architecture trends and topics for 2021 ) 本記事ではその概要を解説する。
サマリ
- Wardley MapsはSimon Wardleyが提唱した戦略可視化ツールである
- Wardley Mapsを使うことで、技術革新・新しいテクノロジーの登場が自社システムを構成するバリューチェーンに与える影響を可視化することができる
Wardley Mapsとは何か
Wardley MapsはSimon Wardleyが提唱した戦略可視化ツールであり、2016年に概要を紹介するスライドが氏によって公開されている。( An introduction to Wardley Maps ) 以下のWardley Mapsの例を示す。図の見方だが、縦軸はバリューチェーンを、横軸は、コンポーネントが技術発展ライフサイクル上のどこに位置するのかを表す。
図の出展 : https://www.slideshare.net/swardley/why-the-fuss-about-serverless-88107645 P110
縦軸の詳細だが、図の例では、オンラインの写真保存サービスを提供している会社が顧客に価値を提供するためのバリューチェーンにおいて、利用されている技術スタックの連鎖が示されている。DCで動作するサーバーによりWebサービスがホスティングされており、顧客はそれにアクセスすることで写真を保存できる、というのが概略となる。
図の出展 : Doctrine or Dogma?. Challenge Your Wardley Mapping… | by Erik Schön | The Startup | Medium
横軸の詳細だが、以下に記載の4フェーズの状態遷移モデルのようなイメージの分類学となっている。キャズムとかガートナーのハイプ・サイクルを念頭に置くと理解しやすいかもしれない。
- genesisなコンポーネントは、発見されたばかりで生まれたてほやほやの新たな概念である。我々はこのアイデアについてまだあまり知見を持っておらず、他の探求はこれから始まる
- custom builtなコンポーネントは、世の中ではまだまだ珍しい状態であり、知見が一定たまりつつらあるものの未だ「実験中」のフェーズである。特定の会社で特定の用途のために、フルスクラッチの製品が動作しているケースが多く、世に普及するためにはフェースが次の段階へ進む必要がある。ソフトウェアの仕様も未だ不安定であり、バージョンアップ等で大きく変わる可能性がある
- productに達したコンポーネントは、製品コンセプトや利用方法が世の中にある程度認識された状態になっており、ソフトウェアの仕様も成熟展安定度が上がり変化の速度もだいぶゆっくりになっている
- commodityに達したコンポーネントは、標準化が完了しており、世の中で特定の目的のために広く使われる状態になっている
※ 前述の Doctrine or Dogma?. Challenge Your Wardley Mapping… | by Erik Schön | The Startup | Medium をベースに和文を作成+一部追記
これを使うと何が幸せなのか?
Wardley Mapsを使うことで、技術革新・新しいテクノロジーの登場が自社システムを構成するバリューチェーンに与える影響を可視化することができる。例えば、以下の図ではServerless(JEFF)が登場することによりWebApplicationを構成するバリューチェーンを構成する各コンポーネントがどのように置き換わるのか?が赤線で図示されている。これにより、特定の新技術の登場(点)が全体としてのバリューチェーン/技術スタック(線)にどのような影響を与えるのか?が可視化される。
また、自社の技術戦略/ロードマップを検討したり、要素技術の置き換えを時系列を伴うDirecotional Movemenetとして記録する際にもWardley Mapsを活用することができる。
図の出展 : https://www.slideshare.net/swardley/why-the-fuss-about-serverless-88107645 P248
Footnote
[1] 本記事の公開後に職場の同僚に教えてもらったのですが、DDD Europe 2020にて同様にWardley Mapsに言及した発表があったそうです
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